【目次】
3.厚手メリノウール靴下のデメリット(靴が進化したからこそ生まれる問題)
登山愛好家との対話から見えた“違和感”
「登山靴はどんどん進化しているのに、靴下は昔からあまり変わっていない気がするんです。」
これは、年間60回以上山に登る愛好家の方と話していて出てきた言葉です。
彼は長年さまざまな靴と靴下を試してきましたが、強く感じているのは 「靴と靴下の進化スピードの差」 です。
確かに登山靴は、ここ数十年で大きく進化しました。
昔は重く硬い革靴が主流で、靴底に釘を打っただけのシンプルな構造。長時間歩けば足は痛み、濡れたら乾かず、冷えから守るのも厚手の靴下に頼るしかありませんでした。
しかし現代の登山靴は違います。
ゴアテックスなどの防水透湿素材を用い、EVAやPUフォームのミッドソールでクッション性を高め、軽量化とフィット感を両立。
さらに厳冬期の断熱性を備えたブーツや、夏山や縦走に適した薄くて軽い靴まで、シーンごとに選べる豊富なバリエーションが存在します。
では、靴下はどうでしょうか。
「メリノウール」「厚手」だけで本当にいいのか?
登山靴下といえば、売り場でよく目にするのが 「メリノウール」「厚手」 というキーワードです。
メリノウールは調湿性・保温性・防臭性に優れ、登山に最適な素材であることは間違いありません。
厚手の靴下も、長時間の登山で足裏を守るクッションとして重要な役割を果たします。
しかし、靴の進化に比べると靴下のラインナップは単調で、「厚手メリノさえ履けば安心」という雰囲気が長く続いているように感じます。
実際、アウトドアショップでも「登山には厚手メリノが一番」と勧められることが多いでしょう。
ところが、靴の進化によって 厚手メリノの弱点が浮かび上がってきたと私たちは思います。
靴の進化が生んだ「厚手メリノ靴下のデメリット」
1. クッションの重複
最新の登山靴はソールのクッション性が非常に高く設計されています。
厚手の靴下でさらにクッションを足すと、靴本来のフィット感を損ね、靴擦れやマメを引き起こすことがあります。
特に「靴下が厚すぎて靴内が窮屈になる」ケースはよく聞かれます。
2. 過剰な保温性
冬用登山靴には断熱材が組み込まれており、厚手のメリノウール靴下を重ねると過剰に暖かくなり、汗をかきすぎて逆に冷えを招くことがあります。
これは「汗冷え」と呼ばれ、厳冬期には凍傷のリスクにもつながります。
3. 透湿性能の阻害
ゴアテックスなどの透湿性を備えた靴でも、厚手の靴下が湿気を抱え込みすぎると、透湿性能が十分に発揮されません。
結果として蒸れや不快感が残り、皮膚トラブルにつながる場合があります。
4. 軽量シューズとのミスマッチ
近年人気のトレイルランニングシューズやファストパッキング用の軽量シューズは、薄く軽い靴下との相性を前提に設計されています。
そこに厚手の靴下を合わせると、せっかくの軽快さが失われ、蒸れや疲労感を増すことがあります。
厚手メリノ靴下に頼りすぎると起きやすい症状
実際に登山愛好家からも、こんな声を聞きました。
・指の間が蒸れてマメができやすい
・厚手すぎて靴のフィット感が悪くなり、歩行後半に足が痛む
・夏山で汗をかき、靴下が乾かず不快感が残った
・厚みで圧迫され、血流が悪くなって足先がしびれる
つまり、厚手メリノ靴下が万能というわけではなく、むしろ 「靴の進化に合わせた新しい靴下選び」が求められている のです。
靴と同じように、靴下も“シーン別”で選ぶ時代
・夏山・高温の環境
薄手のメリノウール+化繊混紡、通気性のあるメッシュ構造、そして「5本指ソックス」。
5本指タイプは指の間の蒸れを防ぎ、マメ予防にも効果的です。
・縦走・長時間歩行
薄手~中厚のメリノウールに加え、踵やつま先を補強した耐久性の高い靴下。アーチサポート機能を備えたタイプなら、疲労軽減にもつながります。
・冬山・雪山
中厚~厚手メリノウール+断熱性の高い構造。場合によってはライナーソックスを重ねて使うのも有効です。ここでは厚手が活きますが、あくまで「靴との組み合わせ」を考えて選ぶのがポイントです。
「お店の常識=正解」ではない
アウトドアショップの店員さんは経験豊富ですが、取り扱っている商品の範囲で勧めてくるのも事実です。
そのため「厚手メリノが一番」と言われても、それは必ずしもあなたの登山スタイルに合っているとは限りません。
大事なのは、自分が登る山・使う靴・季節や環境に合わせて、靴下も選び分けることです。
まとめ:靴下も進化させるべき装備
登山靴がそうであったように、靴下もまたシーンごとに最適化されるべきで、今は機能や形状のバリエーションを持つ靴下が必要です。
厚手メリノは決して間違いではない
しかし、「厚手=万能」ではない
あなたは今、自分の登山スタイルに合った靴下を選べていますでしょうか?
もし「いつも厚手メリノ一択」だとしたら、ぜひ一度見直してみてください。
きっと山での快適さが大きく変わるはずです。